びは祖先代々お目にかかったという話さえも承ったことがございませんゆえ、半信半疑に聞いておりましたところ、疑うならばお呼び申してしんぜようと申しまして、なにやら呪文《じゅもん》のようなことを二言三言おっしゃいましたら、二尺ばかりのまっしろいへびが、ほんとうに縁側からにょろにょろとはいってきたんでございますよ!」
「それで、いかがいたした。災難のがれに、娘を供養にあげろと申しおったか!」
「へえい。供養金を百両と、娘の千恵めを五日間お比丘尼さまのご祈祷所《きとうじょ》におこもりさせたら、へび静めができると、このようなことを申しましたゆえ、どんな災難がござりまするか、つまらぬあだをされてはと震え上がりまして、おっしゃるとおりにしましたところ、奇態ではござりませぬか、お祈祷所はそのままでございましたが、ただいま行ってみますると、娘もお比丘尼さまもどこへ行ったものやら、かいもくあとかたも見えないのでござります」
「綿半とやら、そちも同様だったか」
「へえい。一日だけてまえのほうが早いだけのことで、何から何までそっくりでござりました。ほかのものならそれほどもぎょうてんいたしませぬが、見たばかりでも
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