3水準1−84−94]校も、にせ駕籠大名も、みんな裸にむいたら十年このかた行くえが知れねえといった駿河屋の勘当むすこの宗助めだぜ」
「えッ。そりゃまた下手人が妙な野郎のところに結びついたもんですが、どうしてそんな眼がおつきですかい」
「どうもこうもねえ、おめえが今その口で、勘当むすこが芸ごとと弓に凝りすぎたといったじゃねえか。おおかた落ちぶれやがって、器用なまねができるのをさいわい、河原者《かわらもの》の群れにでも身をおとしゃがったにちげえねえんだ。弓にしてからがおそらく半弓にちげえねえよ。それよりも、肝心な証拠は直筆の借用証書なんだ。本人のてめえだからこそ、直筆だろうと真筆だろうと何枚だっても書けるじゃねえか」
「でも、それにしたって、生まれたうちへなにもご家人に化けていかなくたっていいじゃござんせんか」
「あいかわらずものわかりの悪いやつだな。七生までも勘当されたといったじゃねえか。あまつさえ、千両もの大金をねだりに行くんだ。勘当されたものがしらふで行かれるかい」
「なるほどね。そういわれりゃそれにちげえねえが、野郎めまたなんだって、千両もの大金がいるんだろうね」
「路銀をこしれえ
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