く右門が不審に思っていると、伝六がひとりではしゃぎながら、ひとりで心得顔に、事の子細を説明いたしました。
「人間てがらを重ねておくと、こういう堀り出し者が、ひとりでに向こうから集まってくるんだから、ありがたいこっちゃござんせんか。実は今、こちらに晩のおしたくにやって来ようとすると、ひょっくりこの珍客があまくだってめえりましてね、きょうから右門のだんなの手下になることに話が決まったから、だんなに引き合わせろとこう申しましたんで、さっそくお目見えにつれてまいりましたが、すばらしい珍品じゃござんせんか。どうです! 御意に召しませんか」
「不意に妙なことをいうが、いったいだれが手下にしてやると申した」
 御意に召そうにも召さないにも、まるでいうことが右門には初耳でしたから、あっけにとられて聞きとがめると、ところが、いたって伝六がおちついていいました。
「だから、あまくだったといってるんじゃござんせんか。ここに松平のお殿さまからのりっぱなご添書がごぜえますから、ご覧なせえましよ」
 うやうやしく伝六が奉書包みをさし出しましたものでしたから、さっそく右門も披見《ひけん》すると、いかさまりっぱなお添
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