ようにご自身申されまして、わたしの姉を無理無体におくくしになりながらお連れ帰りなさったと聞きましたゆえ、たとえだれがなんと申されましょうとも、姉にかぎってそんなむちゃなことはしないはずと、ついカッとなりましてあとを追いかけ、あそこの茂みで様子をうかがっておりましたところへ、だんなさまがたのお姿が見えましたゆえ、てっきりもう姉を牢屋《ろうや》へぶち込んでのお帰りと存じまして、ちょうど舞台から持って帰ったままの手裏剣がふところにあったのをさいわい、腹だちまぎれに前後のわきまえもなく、先ほどのようなだいそれたまねをしたのでござります」
事実としたら、親方殺しの下手人が、それなる少年の姉であるか否かは二の次として、はしなくもここにむっつり右門がふたり生じたわけでしたから、いかさまこれは奇態といわねばなりませんでしたが、しかし、逐一を聞くや同時に捕物名人の面にまず上がったものは、ほんのりとした微笑です。それから、例の烱々《けいけい》としたまなこをらんらんと光らして、おもむろに、あごのまばらひげをつんつんとひっぱっていたようでしたが、いっしょにずばりと天下第一の胸がすく名|啖呵《たんか》が言い放
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