す」
「なにッ、親方殺しの下手人とな※[#疑問符感嘆符、1−8−77] いよいよ聞き捨て[#「聞き捨て」は底本では「聞て捨て」]ならぬことを申すが、そなたの姉がどこで何をいたして、どこのどんなむっつり右門が引いてまいったと申すのじゃ」
不意からいでて、ますます不意なことばでしたから、右門がしたたかにめんくらっていると、少年がへへいというように、ややしばしまじまじと名人の面を見つめていた様子でしたが、けげんそうにいいました。
「では、あの、だんなさまは少しもご存じないのでござりまするか」
「知らぬ、知らぬ。まったくの初耳なればこそ、かくおどろいているしだいじゃが、いったいいかがしたのじゃ」
「いかがも何もござりませぬ。まことご存じよりがござりませねば、詳しゅう申し上げいではなりませぬが、実はこうでござります。わたくしめは、いかにもだんなさまが先ほど仰せられましたように、この月初めから奥山の娘かるわざ師一座に仲間して、つたない手裏剣打ちをお目にかけておりまする芸人でござりまするが、つい半刻《はんとき》ほどまえでござりました。いつものように舞台を済まして、なにげなく楽屋へ帰ってまいりますと
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