、わけもなく癇癪《かんしゃく》筋をふくらませて、おそろしくいけぞんざいな痛罵《つうば》を右門に浴びせかけました。
「めくら役人めが、なにょぬかしゃがるかい! 役者だろうとなんだろうと、大きなお世話だ。こうなりゃもうじたばたしねえから、さ、殺せ! さ、殺しゃがれッ」
いう少年も少年でしたが、聞いていった右門もまた右門でした。
「そうか、じゃ、望みどおり殺してやるが、おれの殺し方は、ちっと冷たいぜ」
変なことをいいながら、うそうそと笑いわらいかたわらを顧みると、伝六に不意と命じました。
「辰にもてつだわせて、手おけに水を二、三杯持ってきなよ」
「え※[#疑問符感嘆符、1−8−77] 水で人間が死ねますかい?」
「またお株を始めやがったな。なにもいちいち聞き返さなくっていいじゃねえか。持ってこいってたら持ってきなよ」
「いいえね、あっしゃもう一年のうえもだんなのそばにくっついているんだから、どんなとんちんかんなことをおっしゃろうと、まただんなのおはこが出たなと思うだけで、べつに驚きゃしませんが、善光寺辰あ、まだほやほやなんだからね、さぞかしめんくらうだろうと思って、ちょっと兄貴風を吹かし
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