ごとく、おどろいて叫びました。
「おい、伝六ッ、伝六ッ。こりゃ女だぜ!」
「えッ。ど、どこにそんな証拠がござんすかい!」
「あの胸のところを見ろ! ぬれてぴったり吸いついている着物の下から、ふっくらと乳ぶさの丸みが見えるじゃねえか。念のため、きさまその覆面をはいでみろ!」
「えッ※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
「えじゃねえ、覆面をはいでみろ!」
「でもだ、だ、だいじょうぶですか」
「いざといや、草香流がものをいわあ。早くはいでみろ!」
 おそるおそる伝六が近よって、こわごわ[#「こわごわ」は底本では「こわごろ」]覆面をはいでいた[#「はいでいた」は底本では「はいでみた」]ようでしたが、と――果然、黒布の下から、妖々《ようよう》として現われ出たものは、まだ二十六、七歳のあだめかしい、根下がりいちょうに結った青白い女の顔でしたから、ふたりが等しく意外な面持ちに打たれているとき、突然でありました。ぱっちりと妖女《ようじょ》がまなこをあけて、夢からさめでもしたかのごとく、きょときょとあたりを見まわしていたようでしたが、そこに右門主従のいたのを見ると、ぎょッとしたように起き上がりながら、あ
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