ざいましたので、いつもより早寝をいたしまして、ぐっすり寝込んでいると、いきなり雨戸がばりばりとすさまじい音をたてて、破れましたからね。はっと思って目をあけてみると、もうそのとき、野郎があっしのまくらもとに来ていやがったんですよ」
「小がらのやさ男だったという話じゃが、そのとおりか」
「へえい、なにしろこわかったので、しかとした背たけはわかりませんでしたが、五尺の上は出ていなかったように思われますよ。お定まりのような覆面でしてね。着物は唐棧格子《とうざんこうし》の荒いやつでしたが、だのに野郎とても怪力でござんしてな、あっしがはね起きようとしたら、やにわに片足で胸のところを踏んづけておきやがって、声もなにも出す暇がないうちに、短いわきざしでこのとおり、左手の親指と人さし指だけを二本根もとからすぱりと切りゃがって、すうと出てうせやがったんですよ」
「なるほどな。では、つくだに屋の主人、そちのほうはどんなもようじゃった」
「わたしのほうもだいたい手口が同じでございますが、ただ一つ妙なことには、どうしたことか、野郎の着物が水びたしにぐっしょりぬれていたんですがね。そのうえ妙なことには、たしかにぷ
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