くびると命がないぞッ」
 おろかなところへ旗本風を吹かして、いっせいに抜き放ちながら刃ぶすまをこしらえましたので、右門はゆうぜんとふところ手をしたまま、微笑しいしい三人の太刀《たち》の構えをうち見守っていましたが、と……弥三郎はけっきょく笑止千万な鍍金《めっき》旗本でありました。右門のぶきみなくらいにゆうぜんとしたおちつきぶりを見て、とうてい三人の悪友だけではわが身の安全がおぼつかないと思ったものか、いきなり家の内めがけて逃げ出しましたものですから、もう事ここにいたらば、右門に待たれるものはおなじみのあの草香流のみです。どこか別の出口をたよって遠くへ逐電したらあとがめんどうと思いましたので、おもむろにふところから両手を出すと、ぽきぽきと小気味よげに節鳴りをさせていましたが、もうそれが鳴れば、草香流の物をいうのは実に一瞬のうちのことでありました。
「ちょっくら地獄までいって涼んできなせえよッ」
 叫ぶや、刃先の下をかいくぐって、右、左、まんなかと、疾風迅雷《しっぷうじんらい》の早さであっさり三人をのけぞらしておくと、さあ伝六ッとばかりに、弥三郎のあとを追って屋内深く駆け入りました。
 と
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