も、しょせん右門との取り組みは問題になるまいと思われますのに、またしてもそこへ割ってはいろうとしたものでしたから、八番てがら以来すっかりけいべつの度を増している伝六が、さっそくに口をとがらして右門のそでを引きました。
「ちぇッ、身のほどを知らねえ親方だな。あのいもづらのだんなが、またしつこく追っかけてきましたぜ」
いわれて右門もはじめてそれと気がついたようでしたが、しかしわれらの捕物名人は、その秀麗な面のように、心がらのすがすがしいいたって大腹な寛仁長者でした。
「ほほう、さすがは敬公だな。おめえのように、そうがみがみとたなおろしをするもんじゃねえよ。きょうここに詰めかけていた与力同心は、南北あわせて何十騎いたか知らねえが、今の変なあの一番を見て、こいつ臭そうだなとにらんだものは、おれをのぞいてあの敬四郎一人だけじゃねえか。了見はちっと気に食わねえが、さすが腕っききだけがものはあるから、ほめてやれよ、ほめてやれよ」
「だって、あのげじげじ、きっとまただんなのじゃまをしますぜ」
いっているまに、右門と顔を合わせて、こづらにくいせせら笑いをその醜い顔に見せていたようでしたが、ふたりをつ
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