か回り気だけはおかしいくらい発達していたものでしたから、あたりには黒山のお客がいるというのに、おかまいなく右門を粗略に扱いながら、あけすけとやりだしました。
「ちぇッ、あきれるな。いくらべっぴんだからって、男のべっぴんじゃ、おかしくもおもしろくもねえじゃござんせんか。どんな帯をお買い上げだか知らねえが、買うなら早いことおしなせえよ」
その声がつつぬけに聞こえたとみえて、若主人陽吉がふとこちらを向きましたので、右門の視線と陽吉の視線とが、はしなくもそこでぱたりとぶつかりました。と同時に、どうしたことか、陽吉の両ほおがぱっと首筋のあたりまでまっかになりました。その赤らみ方というものが、また、まるで男とは見えないほどにいかにもういういしく娘々していたものでしたから、右門もちょっとそれにはめんくらったようでしたが、ちょうどそのとき手すきとなった店員が腰低くやって来て、注文の品を尋ねましたので、気がついてぶっきらぼうに答えました。
「女の子の丸帯じゃ――」
「えッ? じゃ、冗談でなくてほんとうですかい」
出がけにああはいっても、右門にかぎって、あの子やこの子が自分の知らないまにできようとは思
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