た》をうがって、ゆうぜんとふところ手をしながら、いっそうひゅうひゅうとこがらしの吹きつのりだした往来へ歩きだしましたので、伝六も負けずにあとを追いました。
年の瀬近い江戸の大路の屋並みは、すでにまったく大戸をおろして、まこと名物の江戸の花が、いまにもそこらあたりからじゃんじゃんぼうとやりだしそうな夜ふけでした。
行きついてみると、案の定金助は出先からもどりかえって、そこの長火ばちの向こうに古稀《こき》の老体とは見えぬがんじょうな体躯《たいく》をどっしりと横すわりにさせていたものでしたから、右門はごめんとばかり上がっていきました。
しかし、金助のそのつらだましいをしげしげと見て、右門はちょいと、二の足を踏んだかたちでありました。生まれおちるから火事の中に育って、この世にこわいものは一つもないといいたげな、不敵無類の面貌《めんぼう》をしていましたものでしたから、人を見て術を施すにさとい右門は、はて、いかにして口をあかしたものかというように、ややしばしためらっていたようでしたが、そのときはからずもかれの目にとまったものは、そこのへやの境に使われている四本のからかみふすまです。ふすまは家
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