しや、ただの素浪人と思っていたのが、いずれも相当に使うらしく、それぞれ型にはまった太刀筋を示していたものでしたから、右門は騒がずに声をかけました。
「では、きさまらも一つ穴の浪人上がりじゃな」
「今はじめて知ったかッ。放蕩《ほうとう》無頼に身をもちくずしたために、南部家を追放された六人組のやくざ者だ。むっつり右門だか、とっくり右門だか知らねえが、南部の浪人者にも骨があるぞッ! さ! 抜けッ!」
天下公知の大立て物を、ののしるべきことばに事を欠いて、とっくり右門と冷笑したものでしたから、なんじょう右門の許すべき、いよいよ今度こそは抜かなくちゃならないかな、というように会心そうな笑《え》みを見せていましたが、静かに黙山と熊仲の両名をうしろへかばうと、ぷつりと音もなく細身の鯉口《こいぐち》を切りながら、威嚇するようにいいました。
「とっくり右門でもびっくり右門でもさしつかえはないが、このからだが二寸動くと錣正流《しころせいりゅう》の居合い切りで、三人ぐらいいちどきに命がとぶぞッ。それでも来るかッ。それとも、今のうちに刃《やいば》を引くかッ」
それがまたほんとうに抜いたとならば掛け値のない
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