いたものでしたから、右門は大声に叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]《しった》すると、まずその荒肝をひしぎました。
「この生臭めがッ。そのざまはなんじゃ。もう逃がしはせぬぞ。さッ、神妙にどろをはけッ」
むろんのことに、相手はぎょッとなって、すでに生きた心持ちもないような青ざめ方でしたが、しかし震えながらいったことばが少し意外でした。
「ど、どうも恐れ入りました。いかにも出家の身に不届きな女犯をおかしましてござりますゆえ、もうこうなれば神妙におなわをちょうだいいたしましょう。――さ、おみち、おまえももう度胸をすえて、おとなしくお番所へいきな」
いうと、女はおみちという名まえであるのか、因果を含めて両手をうしろに回しながら、割合神妙におなわを受けようとしたものでしたから、右門はやや不審をいだいてたたみかけました。
「まてまて。今きさまの申したところをきけば、女犯の罪ばかりのようなことをいうが、では、これなる黙山の兄をあやめた下手人ではないというのか!」
「め、めっそうもござりませぬよ。では、だんながたは、てまえが兄の鉄山を討った下手人と見込んで、お越しなさったのでござりまするか
前へ
次へ
全44ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング