れている以上は、草香流ばかりではいけないかもしれないと思いましたものでしたから、ここに捕物《とりもの》を重ねること第九回、いまぞはじめて腰の一刀にものをもいわせようというかのように、蝋色鞘《ろいろざや》細身のわざものにしめりをくれておくと、さっそうとして立ち上がりました。
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行きつくと幸運でした。早めに帰宅したものか、そこの茶の間の長火ばちの向こうに、どっかりとおおあぐらをかいて、八端《はったん》のどてらにその醜悪な肉体を包みながら、いかさま上方くだりの絹あきんどといったふうに化け込んで、当のその八つ化け仙次がやにさがっていたものでしたから、右門はずいと座敷へ上がっていきました。
しかし、上がると同時にちょっとまた意表をついたので。当の相手がそこにのめのめとやにさがっているんだから、すぐにも飛びかかるだろうと思われたのが、意外にも右門はくるりひざをまくると、伝法に長火ばちのこちらへおおあぐらをかいて、同じく伝法に、不意と妙な啖呵《たんか》をきりだしました。
「八つ化けの仙次さんとやら、お初でござりますね。聞きゃ、こちらへお越しで、いろいろおひざもとを食い荒らしていな
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