終わり]
「この五枚を、日本橋とか浅草といったような、人出の個所へすぐさまお立てなすって、夜この時刻に、あの森のあたりにでも張り込んでいたら、十中八、九逐電中の三人をも、ご貴殿のてがらにめしとることができましょうよ」
立て札を手渡しながら敬四郎に注意をしておくと、右門はさらに権右衛門夫妻に言い渡しました。
「わしの慈悲が肝に銘じたならば、逃ぐるようなこともあるまいによって、流罪のおさばきが決まるまでこのまま当屋敷に起きふしをさし許すから、その間にじゅうぶん島へ渡るしたくなど整えておくがよいぞ。――では、伝六、そろそろまた主従ふたりきりの大名道中いたそうかな」
そして、伝六に槍をかつがせると、さっさと表へ出ていってしまいました。
――その翌々日の朝でありました。右門の貸してやったあの立て札の機知によって、案の定残りの卍組三人をめしとって、あばたの敬四郎がほくほくしながらお組屋敷を訪れると、精いっぱいの感謝を現わしながらいいました。
「いや、おかげで、えらいてがらにありつき、お礼のいいようもござらぬ。どうしたらよろしいか、てまえにはくふうもつかぬが、何をお礼にしたらよろしゅうござろ
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