でしたが、一回ならず二度までも右門のために功名を奪われていたものでしたから、今度は必勝を期しているのか、右門がむっつりとしてそこに現われたのをみとめると、ろこつな敵意を示して、その出動を拒絶いたしました。
「せっかくだが、こりゃおれのなわ張りだからね。いらぬ手出しはやめにしてもらおうじゃねえか」
右門は敬四郎が当面の責任者である点からいって、ほぼそうあることを予期していたものでしたから、それほど気にかけませんでしたが、腹をたてたのは伝六で――。
「じゃなんですかい、だんなはあっしどもが八丁堀の人間じゃねえとおっしゃるんですかい」
「上役に向かって何をいうかッ」
「ちえッ、上役も時と場合によりけりですよ。これがつかまらなかったひにゃ、だんなはじめあっしども一統の恥っさらしなんだからね。せっかくおいらのだんながお出ましくだすったっていうのに、今のごあいさつあ、ちっと肝ったまが小さすぎるじゃござんせんか」
しきりと伝六が敬四郎に食ってかかっているのを、右門はあごをなでながら黙ってにやにややっていましたが、なに思ったかふいッとそこを立ち去ると、どんどん牢屋敷《ろうやしき》のほうへやって参り
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