うんですよ。こいつ、いいねた[#「ねた」に傍点]あげたと思ったからね、まずだんなのところへ連れてこなくちゃと、おおいばりで非人どもしょっぴいてけえりかかったら、あばたのだんなが息を切りながら駆けつけてきて、いきなりぽかりとくらわしたんですよ」
「おめえをぽかりとやったのか」
「そ、そうなんです。だから、あっしも食ってかかったらね、下人が何を生意気なことぬかすんだとおっしゃって、せっかくあっしがつかまえた非人を腕ずくで横取りしたんですよ」
「じゃ、あばたの野郎も、牢番の者から寝棺のことを聞き込んだんだな」
「だろうと思うんですがね。でなくちゃ、いくらあばたのだんなが上役だからって、あっしの眉間《みけん》にこんなこぶをこしらえるはずあござんせんからね。いいえ、そいつもときによっちゃいいんですよ。どうせ、あっしゃましゃくにも合わねえ下人だからね、なぐろうと、けろうと、それがあっしたち下人どもの模範ともなるべき上役のかたのおやりなすってもいいことでしたら、いっせえあっしもみれんたらしい愚痴はこぼしませんがね。でも、それじゃ、せっかく今までご恩をうけただんなに合わす顔がねえんじゃござんせんか。あ
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