で、敬四郎のいこじのために知ることをえなかったそれなる罪人の人相風体を、からめてからかぎ出そうという計画のためでした。
3
計画はとどこおりなく運ばれて、玄庵先生は気軽に右門を請じ上げましたものでしたから、ただちに目的の中心へ触れていきました。
「ちょっと承りたいことがありまして参じましたが、もしや、ゆうべ伝馬町の平牢から、死人となって出た者はござりませなんだか」
「ああ、ありましたよ、ありましたよ。まだ宵《よい》のうちじゃったがな。もう長いこと労咳《ろうがい》でわしがめんどうみていた無宿者の老人が、急にゆうべ変が来たというて呼び迎いに参ったのでな。行くにはあたるまいとも存じたが、役儀のてまえそうもなるまいから、検診してさっそく非人どものほうへ下げ渡させましたわい」
「そのとき、なんぞお気づきのことはござりませなんだか」
「さようのう。死因はたしかに病気じゃったし、ほかに不審とも思われた節はないが、身寄りもない無宿者に、だれがそんな手回しのいいことをしたものか、棺にして運び出したようでござりましたよ」
「え? 棺でござりましたとな!」
「さよう、それもふたり分ぐらいはゆ
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