手を打って尋ねました。
「越前さまのご家中でござりましょうな」
「はい……お下屋敷の奥勤めをいたしておりまする百合江《ゆりえ》と申す者でござります」
「おおかたその辺でござろうと、右門けさからお待ちうけいたしておりました。なんのためにお越しなさったかも存じてござるによって、けっしてお隠しなさってはなりませぬぞ。おそらく、石川殿と秘めごとがござりましょうな」
と、百合江と名のったそれなる少女は、胸中を射ぬかれたごとくに、ぱっと面を染めながら口ごもったので、のがさずに右門が追いかけました。
「察するところ、それあるために、杉弥どのめしとられたと聞いて、てまえに掛け合うためにお越しでござりましょうが、むだなお隠しなさりますれば、いとしいおかたの生死にもかかわる大事でござるぞ。まだ人目を忍ばねばならぬお仲なればお仲のように、拙者が誓ってお力となってしんぜようから、包まずにお明かしめされよ」
しかし、なお少女は言いためらっていましたが、ようやくにして思い決しましたか、案のとおり秘めごとを打ち明けました。
「よく納得が参りました。お恥ずかしい仕儀にござりまするが、お目がねどおり、まだ人目を忍ば
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