まり、おかまいもなくすぐにぶちまけようとしたものでしたから、右門は少女のいじらしい心根をおしはかって、とっさに目まぜでしかっておくと、別間に伝六をいざないながら、その報告を聞きました。
 それによると、お静への打擲《ちょうちゃく》折檻《せっかん》はむろんのことににらんだとおりで、今までも近所かいわいに評判なほどでしたが、ことに浪人者の不審なる入水《じゅすい》以後は、どうしたことか毎夜五つから四つまでの時刻にいっそう折檻の度が強まって、ひいひいと痛苦に泣き叫ぶお静の悲鳴が近所にもしばしば聞こえたということでありました。それから、つけたりに、それなる問題の継母が、お静とは姉妹ぐらいにしか見られないまだ二十五、六の若新造で、すばらしくいろっぽい容色の持ち主であるということ、および夫のいぶかしき入水以来どうしたことかめきめき金回りがよくなったということの、思い設けぬ材料が二つも報告されたものでしたから、右門のまなこはぎらぎらと予定のごとくに輝きを帯び、その口からは憤るがごとき、つぶやきが鋭く放たれました。
「ちくしょうめ。八丁堀にゃめくらしかいねえと思ってやがるな」
 だから、ただちになんらか
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