も物を言い、というその物をいわせたものでしたから、表へ出ると同時に何もかも知っていたか、伝六が少しにやにやしていいました。
「ね、だんな。ちょっと妙なことをききますがね。だんなはそのとおりの色男じゃあるし、べっぴんならばほかに掃くほどもござんすだろうに、あのまあ太っちょの年増《としま》のどこがお気に召したんですかい。まさかに、あの女の切り下げ髪にふらふらなすって、だんなほどの堅人が目じりをさげたんじゃござんすまいね」
「ござんしたらどうするかい」
 ところが、右門が意外なことを口走ったものでしたから、伝六がすっかり鼻をつままれてしまいました。
「え※[#感嘆符疑問符、1−8−78] じゃなんですかい、あのぶよんとしたところが気にくっちまったとでもいうんですかい?」
「でも、ぶよんとはしているが、残り香が深そうで、なかなか美形だぜ」
「へへい、おどろいちゃったな。そ、そりゃ、なるほどべっぴんはべっぴんですがね、まゆも青いし、くちびるも赤いし、まだみずけもたっぷりあるから、残り香とやらもなるほど深うござんすにはござんすだろうがね、でも、ありゃ後家さんですぜ」
「後家ならわるいか」
「わ、わ
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