やつだ、といいたげなまなざしでぎろり右門がおやじの顔を射ぬいたものでしたから、亭主のぎょうてんしたのはもちろんのこと、もみ手が急にひざの上でのり細工のように固まってしまいました。と――右門のいっそうに鋭いまなざしが、そののり細工のように堅くなった亭主の右腕を、じっと射すくめていましたが、不意にえぐるような質問が飛んでいきました。
「おやじ! おまえのその右小手の刀傷はだいぶ古いな」
「えッ!」
「隠さいでもいい。十年ぐらいにはなりそうだが、昔はヤットウをやったものだな」
「ご、ご冗談ばっかり――このとおりの見かけ倒しなただの古道具屋めにござります……」
「でも、道具屋にしてはわしを見そこなったな、新まいか」
「えへへへ……そういう目きき違いがおりおりございますので、とんだいかものをつかませられることがございます……」
「ウハハハハハハ」
と、不思議なことに、突然また右門の態度が変わって、さもおかしそうに大声で、からからとうち笑っていましたが、ずいと座敷へ上がると、からかうように亭主にいいました。
「不意にわしがおかしなことをいったので、きさま、がたがたと、いまだに震えているな。なに、
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