その痕跡《こんせき》があった。歴然としてそこの障子の一本に何かつめでひっかきむしったような紙の破れのあとがあったものでしたから、右門の声は突如として力に満ちながらさえだしました。
「切られたその腕は、どうしたのでござる!」
「え! 腕ですかい。腕なら、だんな、ここにころがってますぜ」
 さすが伝六もおひざもとの岡っ引き、さしずをうけないうちに先回りして、犯跡の証拠収集に努めていたものか、右門のことばに応じて、庭先からそういう声があったものでしたから、まをおかずに、やっていってみると、いかにも手首はまっかに血を吹いて、これがつい数分まえに人のからだへくっついていたんだろうかと怪しまれるようなぶきみな姿をしながら、縁側つづきの便所のわきに投げすてられてありました。しかも、ひょっと見ると、そこの便所の白壁になにやらべったりと黒い跡がついていたものでしたから、右門はあかりをとりよせて、なにげなくのぞき入りました。と同時に、さすがの右門も、おもわず少しばかりぎょっとなりました。見ると、その黒い色とみえたのは紛れもなく生き血の色で、さながらやつでの葉かなんかを押したように歴然と、切り取った手首のて
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