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孟春《もうしゅん》四月の半ばをすぎた城下の夜半は、しんとぬばたまのやみに眠って、まこと家の棟《むね》も三寸下がらんばかりな、底気味のわるい静けさでした。あらぬつじ切りのうわさは、城下の町のもののおびえやすい心をいよいよおびえさせたとみえて、行く道はげに死せるがごとく、人っ子ひとり見かけない寂しさでした。――その寂しい大路小路を、どうしたことか、右門はわざとちゃらちゃら雪駄の音を特別高くちゃらつかせて、ふらりふらりとやって参りました。下手人を捕えようとするなら、少なくも息ぐらい殺していくのが定《じょう》なんですから、だのにことさら高めだした雪駄の音は、どうみても少し不思議なんですが、いかにもそれがなにか自信でもありそうに見えましたものでしたから、何かは知らず伝六もそのとおりまねをしてやっていくと、果然! いや、突然でありました。
「そこのふたり、待てッ!」
叫びながら路地口から飛び出してきて、さッと行く先をさえぎった七、八人の一団がありました。もちろん、おっとり刀で、――だが、右門はおどろくと思いのほかに、さながらそれを心に期したるもののごとく静かに近づいていくと、さびのある声
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