、当ご番所へ参りましてから塩づけになされたのでござりまするか」
「なに、塩づけ……? そのような形跡があるとすれば少しく奇怪じゃが、いずれもそれらは小田切殿持参されたままの品じゃぞ」
持参のままの品と聞きましたから、右門の明知は瞬時にさえ渡って、瞬間に断案を下しました。首は拾いものか買いものか、いずれにしても塩づけの骨董品《こっとうひん》をほかから求めきたったものに相違ないのです。そして、その骨董品を生首と見せかけるべく、別な血を塗ったものに相違ないのです。としたら――右門は必死と考えました。いったい、この首の骨董品はいずこに売っているか?――いうまでもなく、人の死に首なぞ売りひさぐ酔狂な商家は、江戸広しといえどもあるはずはないんですから、出所はむろんのことに、平生塩づけの首の貯蔵を許されている個所に相違ないはずでした。しからば、その公許の塩づけ貯蔵個所なるものは、そもそもどこであるか?――右門の判断を待つまでもなく、それは鈴ガ森と小塚《こづか》ッ原《ぱら》の二個所です。すなわち、首は罪人の首、いまわしきあの獄門首に相違ないという判定が、たなごころをさすごとくたちどころにつきましたも
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