あいつと同じ轍《てつ》で、また江戸じゅうを駆けまわるんでげすかい?」
「いやか」
「どうしてどうして、生まれつき、あっしゃ駆けまわるのが大好きですからね。回ってろといや、一年でも二年でも回ってますが、いったいきょうは、どこを探るんでげすかい?」
「きさまは南町ご番所配属の自身番という自身番を残らず改めろ。この三日以内に、生首をもぎとられた者はないか、行くえ知れずになったものはないかといってな、あったら、例の三つの首の主と思える者の素姓を洗ってくるんだ」
「ありがてえッ、じゃ、いよいよあばたのだんなと本気のさや当てになりましたね。ちくしょう! おしゃべり屋の伝六様がついてらあ。じゃ、ちょっとお待ちなせえよ。この辺は屋敷町で店駕籠はねえかもしれませんからね」
 いうや否や、韋駄天《いだてん》で行ったかと思いましたが、案外にさっそく見つかったとみえて、屈強な替え肩を二人ずつ伴いながら、早駕籠仕立てで威勢のいいところを二丁ひっぱってまいりましたので、一丁は伝六へ、一丁は右門自身で、そして右門みずからは北町奉行ご配下をひとめぐりしようと、すぐに息づえを上げさせました。
 順序として、右門はまず呉
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