たお直参のお旗本なんだから、ご奉行さまだって、ご老中だって、身分がらからいったひにゃ同等なんでがしょう。してみりゃ、なにも三日の間それほどの化け物話を隠しだてしたり、ないしはまた遠慮なんぞするにゃあたらないんだからね。しかるに、おかしなことには、きょうそのお旗本のだんながこっそりお奉行所へやって来て、直接お奉行さまに会ったうえで、身分がらにかかわるんだから、事件のことも、探索のことも、ごく内密にしてくれろといったんだそうでがすよ」
「え? そりゃほんとうか」
「ほんとうともほんとうとも、そこは蛇《じゃ》の道ゃなんとやらで、すっかりかぎ出しちまったんですがね。だもんだから、お奉行さまも、ではだれか腕っこきの者にでもごく内密にやらせましょう、っていってるところへ、運よく行き合わしたのがあばたのあのだんななんです。だから、先生すっかりおどり上がって、今度こそはという意気込みで、自分からそれを買って出たという寸法なんですよ」
 聞き終わると同時に眼をとじてしばらく黙々と考えていましたが、まもなく右門の口からは、りんとして強い一語が放たれました。
「よしッ、そうと聞きゃ男の意地だ! 勝つか負ける
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