はもちろんでした。その一つの賭場《とば》である牛込藁店《うしごめわらだな》へ偶然に行き当たった者が相撲《すもう》上がりの長助で、不幸なことに、かれは少しばかり小欲に深い男でありましたから、検挙しながらわずかのそでの下で、とうとうご法をまげてしまったのです。けれども、かれら伴天連一味の者からいえば、賄賂《わいろ》によって一度は事の暴露を未然に防ぎ、わずかに急場を免れたというものの、やはり、長助は目の上のこぶでした。したがって、坂上与一郎親子に化けてあんな残忍な長助殺しの事件も起きたわけで、それにはまたかっこうなことに、女にしても身ぶるいの出るほどなあのおでん屋の美少年がいたものでしたから、まことにしばいはおあつらえ向きというべきですが、切支丹おでん屋の両名が行なった人さらい事件は、これも異教徒たちの驚嘆すべき計画の一つで、あのとおり美人に化けてその美貌《びぼう》につられて通う侍のお客を物色しながら、例の手でこれを眠らし、誘拐《ゆうかい》したうえにこれを切支丹へ改宗させて、おもむろに再挙を計ろうとしたためでした。侍のみを目がけたのは、いざというときその腕を役だたせよう、というので、玉乗りの
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