るが、切支丹伴天連《きりしたんばてれん》の魔法を防ぐには、どうしたらよろしいのでござりましょうか」
「ほほう、えらいことをまた尋ねに参ったものじゃな。伴天連の魔法にもいろいろあるが、どんな魔法じゃ」
「眠りの術にござります」
「ははあ、あれか。あれは催眠の術と申してな、伊賀甲賀の忍びの術にもある、ごく初歩のわざじゃ。知ってのとおり、なにごとによらず、人に術を施すということは、術者自身が心気を一つにしなけんきゃならぬのでな。それを破る手段も、けっきょくはその術者自身の心気統一をじゃますればいいんじゃ。昼間ならば突然大きな音をたてるとかな、ないしはまた夜の場合ならば急にちかりと明るい光を見せるとかすれば、たいてい破れるものじゃ」
立て板に水を流すごとく、すらすらと催眠破りの秘術を伝授してくれましたので、もはや右門は千人力でした。もよりの自身番へ立ち寄って、特別あかりの強い龕燈《がんどう》を一つ借りうけると、ただちに駕籠を飛ばして、ふたたび柳原の土手わきまで引き返していきました。日にしたらちょうど十三日、普通ならば十三夜の月が、今ごろはまぶしいほどに中天高く上っているべきはずですが、おりか
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