輝きを帯びてまいりました。また、輝きだすのも道理です。いうがごとくに、たったひとりの力で侍ばかりをさらっていくとするなら、少なくもその下手人は人力以上の、まことに幽霊ではあるまいかと思えるほどのなにものか異常な力を持ち備えている者でなければならないはずだからです。とするなら――右門の心にふとわき上がったものは、あの同じ眠りの秘術、長助の場合にも、三百両紛失の場合にも、等しく符節を合わしているあの奇怪な眠りの術でありました。
「よし! いいことを知らしてくれた。ご苦労だが、きさまひとっ走り柳原までいって、もっと詳しいことをあげてきてくれ!」
とぎれた手がかりにほのぼのとしてまた一道の光明がさしてきたので、右門は口早に伝六へ命じました。
お湯もそうそうに上がって心をはずませながら待っていると、伝六は宙を飛んで駆けかえってまいりました。けれども、宙を飛んで帰りはしたが、そのことばつきには不平の色が満ちていたのです。
「ちえッ、だんなの気早にゃ少しあきれましたね。くたびれもうけでしたよ」
「うそか」
「いいえ、人さらいは出るでしょうがね、あの近所の者ではひとりも現場を見たものがないっていい
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