んらい》です。右門は探索の方針についてなによりの手づるを拾いえたので、前途に輝かしい光明を認めながら、ご苦労ともきのどくだったともなんともいわずに、例のごとく黙念としながら、ぷいと表へ出ていくと、即座に伝六に命じました。
「きさま、これから凌英という駒彫り師の家をつきとめろ! つきとめたら、この駒をみせてな、いつごろ彫ったものか、だれに売ったやつだか、心当たりをきいて、買い主がわかったらしょっぴいてこい。わからなきゃ、江戸じゅうのくろうと将棋さしをかたっぱし洗って、どいつの持ち物だか調べるんだ!」
「え? だんなにゃまったくあきれちまいますね。やぶからぼうに変なことおっしゃって、何がいったいどうなったっていうんです?」
わからない場合には、江戸じゅうの将棋さしをかたっぱし洗えといったんですから、伝六がめんくらったのも、無理もないでしょう。しかし、右門のことばには確信がありました。
「文句はあとでいいから、早くしろい!」
「だって、だんな、江戸じゅうの将棋さしを調べる段になると、ちっとやそっとの人数じゃごわせんぜ。有段者だけでも五十人や百人じゃききますまいからね」
「だから、先に凌英っ
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