あやまちと いつはりのために
おだやかな獣の瞳に うつつた
空の色を 見るがいい!
〈私には 何が ある?
〈私には 何が ある?
ああ さびしい足拍子を踏んで
山羊は しづかに 草を 食べてゐる
IX 樹木の影に
日々のなかでは
あはれに 目立たなかつた
あの言葉 いま それは
大きくなつた!
おまへの裡に
僕のなかに 育つたのだ
……外に光が充ち溢れてゐるが
それにもまして かがやいてゐる
いま 僕たちは憩【いこ】ふ
ふたりして持つ この深い耳に
意味ふかく 風はささやいて過ぎる
泉の上に ちひさい波らは
ふるへてやまない……僕たちの
手にとらへられた 光のために
X 夢見たものは‥‥
夢見たものは ひとつの幸福
ねがつたものは ひとつの愛
山なみのあちらにも しづかな村がある
明るい日曜日の 青い空がある
日傘をさした 田舎の娘らが
着かざつて 唄をうたつてゐる
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが 踊りををどつてゐる
告げて うたつてゐるのは
青い翼の一羽の 小鳥
低い枝で うたつてゐる
夢見たものは ひとつの愛
ねがつたものは ひ
前へ
次へ
全13ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
立原 道造 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング