「ふふん。」
馬田はあざけるように笑った。
馬田は、実は昨日委員会が終ったあと、いつになく気がむしゃくしゃして家に帰って行ったのだった。次郎がみんなのどぎもをぬくような血書を書いたということが第一|癪《しゃく》だったうえに、自分もついそれに署名しなければならないはめになり、いかにも次郎の尻馬に乗せられたような恰好になってしまったのが、何としても腹におさまりかねていたのである。で、夕食をすましたら、すぐいつもの仲間にどこかに集ってもらい、血書に何とかけちをつける一方、全校をあすにもストライキに導く計画を相談する肚でいた。ところが、食卓について不機嫌に箸をとっているうちに、ふとなぜ新賀はきょうみんなに次郎が血書を書いたことを秘密にしたのだろう、という疑問が起った。この疑問は、ふしぎに彼の気持を明るくした。というのは、彼は彼なりにそれに判断を下し、何だか次郎の弱点がつかめたように思ったからである。次郎は、自分から言い出したてまえ、どうなり血書を書くには書いたが、書いたあとで、事件の主謀者と見られるのがこわくなり、新賀に自分が書いたことを秘密にするという条件でそれを渡したにちがいない。そう
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