は、何もかもぶちこわしになるんだから。いいかね。
 新賀はひょうし抜けがして三人をふりかえった。三人もおたがいに顔を見合わせているだけである。すると校長はもう一度、「いいかね、君らを信頼してたのんでおくよ。」と、念を押し、「じゃあ、私はすぐ県庁に出かけなけりゃならんから。」と、あたふたと帽子掛の方に行って帽子をかぶった。そこで四人も默ったまま、校長のあとについて室を出て来た、というのである。
 四人の報告は、みんなをふき出させたり、憤慨させたり、不安がらせたりした。しかし、ともかくも血書が県庁に差出されるようになったということで、一応|納得《なっとく》するよりほかなかった。校長が教頭から紙片を受取ったあと、急に様子が変ったということについては、四人をはじめみんなも不審に思い、うまくペテンにかけられたのではないか、などというものがいたが、事情は間もなく判明した。それは、教員室で先生たちがひそかに話しあっていることが、給仕の口をとおして、いちいち生徒の耳にはいって来たからであった。
 それによると、血書のことは、もう昨日のうちに警察や憲兵隊の耳にも入り、県の学務課にも通報されていたらしい。
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