は、しかし、ただやたらに手をふっているだけだった。
 その時、教員室との間の戸ががらりとあいて、教頭の西山先生がはいって来た。西山先生は、三角形のまぶたの奥に小さな眼をいつも鋭く光らせている先生だったが、この時はいやににこにこしていた。手に小さな紙片をもっていたが、それを默って校長に渡すと、すぐまた教員室の方にひきかえした。校長はその紙片を見て何度もうなずいた。そして、それをもみくちゃにして机の下の塵籠《ちりかご》になげこむと、今までとはうって変った落ちつきぶりを見せ、ゆったりと椅子に腰をおろしながら言った。「そうむきになることはない。私はさっきも言ったとおり君らの気持には十分同情しているんだ。君らが血を流して書いたものをまるでむだにするなんて、第一、人間としてそんなことが出来るものではない。幸い今日は県庁に出掛る用事も出来たし、知事閣下に直接お目にかかれるかどうかはわからないが、学務課までにはこの願書を必ず出しておくよ。それで、今度は私の方から君らに願っておきたいが、どうかみんなが落ちついて教室に出るようにしてくれたまえ。変にさわいだりして知事閣下の面目をきずつけるようなことになって
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