い。どうかそんなむりは言わないでくれ。」と、泣いているのか、怒っているのかわからないような声で言った。四人共、その時は、こんなのが自分たちの学校の校長だろうか、という気がして、実際なさけなかったそうである。田上が「僕たちは朝倉先生の留任さえ実現すればいいのですから、校長先生がそれを保証して下さるなら、血書の処置はお任せしましょう。」と言うと、校長は何と思ったか、急に椅子から立ち上って、四人の顔をひとりびとり念入りに見まわした。そして何度も首をふっていたが、おしまいに、永いため息をついて、「君らの非常識には全くあきれてしまう。朝倉先生の退職は県の方針できまったことだ。県の方針で一旦きまった以上、校長としてはどうにもならないではないか、それが君らにはわからんのか。」と言った。そして、もう一度永いため息をついて、どたりと椅子に腰をおろしたが、いかにも思いなやんでいるように眼をつぶって、ひとりごとのように言った。「そりゃ、朝倉先生が惜しい先生だということは私にもよくわかっている。いや、誰よりも私が一番よくわかっているつもりだ。だから、君らが先生の留任を願い出る気持には心から同情する。しかし、何
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