にすぐれた人格者でさえ……」
「ぱか! 何を言うか!」
 爆発するようなどなり声が、彼のすぐまえの席から起った。
「貴様は僕らにお説教をする気か。」
「青年はすべからく時代を超越すべし。」
「真理は、永遠だぞ!」
「卑怯者!」
「狸!」
「ひっこむなら、さっさとひっこめ!」
 そうした叫びがつぎつぎに起り、中にはもう腕まくりをしているものさえあった。
 平尾は土色になってしばらく立往生していたが、あきらめたように壇をおりると、その足でさっさと室を出ていってしまった。
 一瞬、さすがにしいんとなって、みんなは彼のうしろ姿を見おくった。すると誰かが、だしぬけに、とん狂な声で叫んだ。
「狸退散!」
 それで、また、どっと笑い声が起った。その笑い声を圧するように、新賀がどなった。
「田上! 平尾がいなくなれば君が座長だ。さっさと席につけ。」
 田上は今度は元気よく座長席についた。そして、
「さっきからの様子では、留任運動をやることだけは、もう満場一致と見ていいようだが、どうだ。」
「むろんだ!」
「賛成!」
 と叫ぶ声が方々からきこえた。
「では、これからその方法を相談する。誰か案があったら、
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