した苦労もなしに、先生自身の口から、会議の内容を細大もらさすきき出すことが出来たわけなのである。
 むろんそうした生徒は、先生に、「これは君までの話だ、他の生徒には絶対にもらさないように。」と懇々《こんこん》口|留《ど》めされるのが常である。しかし、その生徒がそうした口留めを守るほど道徳的でないこともむろんである。それは、先生が職員会議の秘密について道徳的でないのと同様なのである。彼は、誰先生に直接きいて来たんだという確証を与えることによってのみ、生徒たちに喝采《かっさい》され、彼自身の功績を誇りうるということをよく知っているのである。
 さて、そうした種類の一生徒によって、全校にばらまかれた権威ある情報というのは、こうであった。
 次郎は諭旨《ゆし》退学にきまった。そのほかには処罰者はない。次郎の諭旨退学も、形の上では保証人からの願出による退学になるわけだから、正式には処罰者は一名もないことになるのである。
 次郎の諭旨退学の理由は、教師に対する反抗心が強く、すでに二年生のころから宝鏡先生に対して不遜の言動があり、最近では、配属将校に対してさえ甚しく無礼な態度をとり、しかも反国家的な
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