次郎はさびしく微笑して、しばらく二人の顔を見つめると、かなり烈しい調子で言った。
「僕はどうせ退学さ。それはもうきまうている。昨日の曾根少佐との問題があるからね。僕自身でも、もうこの学校には未練がないんだから、甘んじて処分はうけるよ。しかし、不都合の行為あり退学を命ず、というような掲示が出た時に、それを女の問題だと思われたんじゃ、僕も残念だよ。だから、これだけは、はっきり君らに事情を話して置きたい。実は、これまで誰にも話すまいと思っていたんだが、そんな宣伝をする奴は馬田にちがいないと思うから、馬田のためにも言って置く必要があるんだ。――」
 そう言って彼は、彼がこれまで道江のために馬田に対してとった態度をかくさず説明した。彼は、しかし、説明しているうちに、心の奥に何か知ら暗い影がさすような気がして、自分ながら自分の言葉の調子がみだれるのをどうすることも出来なかった。彼はその影をはらいのけるように、最後に調子を強めて言った。
「僕には何もやましいことはない。僕は僕の信やることをやったまでだ。それがいけないというんなら、もう仕方がないさ。しかし、君らだけには信じてもらいたいね。」
 梅本
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