「そうらしい。本田は陰険で表と裏がいつもちがっている、と言っているそうだ。」
「今になって、本田も、思いきってストライキをやらなかったのを後悔しているだろう。」
こんな噂は、しかし、必ずしも、次郎に反感をもった生徒たちの間だけの噂だとばかりはいえなかった。
彼らの大多数はもうほとんど事件に対する熱からさめてしまって、今さら処罰されるのがばかばかしいという気になっていた。で、処罰の範囲《はんい》が最小限度に食いとめられ、自分たちはその圏《けん》外に立ちたいという、無意識的な希望的観測から、自然、次郎というのっぴきならないらしい「犯罪者」と、その犯罪者を最もにくんでいるらしい曾根少佐とに、噂の焦点を集中していたのである。
そうした種類のさまざまな噂が、あちらこちらで飛んでいる間に、どこからともなく、誰もそれまで予感もしなかった、全く新しい一つの噂がまいこんで来た。それは、次郎は女の問題で退学処分になるらしい、という噂であった。しかも、この噂は、非常な速度で全校にひろがった。そして、次郎に対する反感からの噂やら、希望的観測からの噂やらの中をころげまわっているうちに、しまいには、ちょう
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