思想問題は大丈夫だっていうところを見せたいんだってさ。」
「ふうん。そんなことを考えているんか。じゃ処罰は案外軽いかな。」
「僕は軽いと思う。退学なんかあまりないんじゃないかな。第一、あんまりひどいことをやると、僕たちもだまっておれんからね。そうなると、また学校が困るだろう。」
「曾根少佐も、それを心配しているんだよ、きっと。」
「自分の名誉のためにか。」
「ふっふっふっ。」
「しかし、一同訓戒程度ですんだら、蟇の効用もたいしたもんだね。」
「そんなわけには行かんよ。白鳥会の秘密送別会のことは、憲兵隊が問題にしているというし、曾根少佐だって、もうどうにも出来んだろう。」
「少くとも、本田だけは危いね。血書のこともあるし。」
「あいつ、少し図《づ》にのりすぎていたんだ。仕方がないよ。」
「そのくせ、ストライキだけにはいやに反対していたんだが、あれはやっぱり朝倉先生に対する忠勤《ちゅうきん》のつもりだったかね。」
「さあ、どうだか。それも一種の手だったかも知れんぜ。」
「そうだと本田もあてはずれだね。曾根少佐は今でも本田をストライキの煽動者《せんどうしゃ》だと見ているっていうじゃないか。」
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