はないかと思って、ちょっと意外な気がした。しかし、そうではないらしかった。彼は安心しながらも、ますますわけがわからなかった。
「腹の底からの悪人もないが、しかし、また一から十まで完全な善人もない。たいていの人間はやはりならず者だよ。朝倉先生のような人はべつとして、学校の先生でも、先ず百人が百人、ある程度のならず者だと言ったって差支えないと思うね。軍人なんか、このごろは相当のならず者になってしまっているよ。考えようでは指なしの権や、饅頭虎なんかより、よほど始末のわるいならず者だろう。すばらしく大がかりな無茶をやるからね。」
俊亮の言葉の調子には、少しも誇張したわざとらしさがなかった。あたりまえのことをあたりまえに言っている、といった調子だった。しかし、そうであればあるほど、きく人の方には、それが却《かえ》って奇抜に感じられるのだった。みんなの顔はいつの間にか微笑していた。俊三などは、今にも拍手でもしそうな様子だった。俊亮はみんなのそんな様子をちょっと見まわしたあと、次郎に眼をすえ、
「そこで、いよいよ次郎の問題だが、どうだい、これだけ言えばもうわかるだろう。」
次郎には、しかし、まだ
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