の連中も罪が深いね。まだ辞令も出ないうちに、送別会の交渉に来るなんて。しかも場所が実乗院と来ている。」
朝倉先生は奥さんと顔見合わせて愉快そうに笑った。次郎は苦笑しながら、
「あんなこと、いけないと思ったんですが、どうせ先生がお断りになるだろうと思って、僕もいいかげんに賛成しておいたんです。」
「まあ、まあ。」
奥さんは手巾《ハンカチ》を口にあてて、しんから可笑しそうに笑った。
「しかし、それをお断りになったんなら、もうほかにうるさいことはないんでしょう。」
「そうでもなさそうだ。うるさいのは生徒ばかりではないからね。とにかく送別式は私の出発の日にやってもらいたいと思っている。式がすんだら、すぐその足で駅に行けるような時間にね。」
「え?」
と、次郎はおどろいたように朝倉先生の顔を見つめ、それから、奥さんの方に視線を転じた。しかし、二人ともすました顔をしている。
「いったい、いつごろご出発です。」
「あさって。」
と、朝倉先生は奥さんを顧みて、
「大丈夫、あさっては立てるだろう。」
「ええ、お二階の文庫さえ片づけば。」
次郎は眼をまるくして二人を見くらべていたが、急にくってか
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