ばらくまぶたをぱちぱちさせていたが、急に窓わくに頬杖をつき、声をひそめて言った。
「君の気持はよくわかるよ。わしは十分同情もしているんだ。しかし、事情が事情だし、こうなった以上は、さっぱりあきらめる方が賢明だよ。どうだい、授業が終ったら帰りにわしのうちに遊びに来ないか。煎餅でもかじりながら、ゆっくり話してみたいことがあるんだが。」
 次郎は、返事をする代りに、穴のあくほど少佐の顔を見つめた。少佐はそれをどうとったのか、頬杖をついたまま、両手でしきりにカイゼルひげをひねりながら、眼をほそめて笑った。
 次郎は、しかし、いつまでたっても返事をしない。
「実はね――」
 と、少佐は、いかにもうしろをはばかるように、一層声をひそめ、
「このごろわしあてにちょいちょい投書が来るんだが、それが大てい君に関係したことばかりなんだ。その中には君が女に関係があるようなことを書いたのもある。まさか君にそんなことはあるまいと思うが、とにかく面白くないことだ。一応君の弁明もきいておきたいと思っている。むろん、わしあての投書は、それを学校の問題にしようとしまいと、わしの勝手だから、まだどの先生にも話してないんだ
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