の二人は、何かささやきあいながら、名簿と俊亮の顔とを何度も見くらべている。父兄たちの表情はまちまちで、ある者は心配そうに俊亮の顔をのぞき、ある君は急に腕組みをして居すまいを正し、またある者は自分の顔をかくすようにして警察と憲兵隊の二人を見た。
しばらく重い沈默がつづいたあと、課長は少し興奮した調子で言った。
「ご家庭での教育のご方針については、私共から立ち入ってとやかく申上げる筋ではありませんが、今度の問題について、ご令息が根本の筋道を誤っていられないとお考えになるのは、どういうものでしょうか。先ほど私から委《くわ》しく申上げましたような事情がおわかり下されば、そうは考えられないと存じますが……」
「私は、せがれが朝倉先生をお慕い申上げるのは当然だと思いますし、またその気持に少しも濁ったところはないと信じておりますので……」
「しかし、それは朝倉教諭がりっぱな教育者であるということを前提にされてのことでしょう。」
「むろんそうです。私は、朝倉先生ほどの教育者は、今の日本には全く珍らしいとさえ考えているのです。」
「すると、私が教諭の人物について申上げたことは、嘘だとお考えでしょうか。
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