のではありますまいね。」
「いいえ、決してそんなわけでは……」
「こういう場合には、多少疑わしいことでありましても、おたがいに見たまま聞いたままを、ざっくばらんに話しあってみる方が、却ってよろしいかと存じますが。」
「ごもっともです、実は、それで、私も私の知っている限りのことを申し上げたようなわけで……」
 田上老人はまだ納得しかねるといった顔付をして、立ったままでいる。
 すると俊亮が、今までとじていた眼を見ひらいて、微笑しながら言った。
「田上さん、そのことなら、あなたのお孫さんは恐らくご心配ありますまい。何でしたら、私、よくたしかめた上で、お知らせ申上げてもいいのですが。」
「あなたが? 失礼ですが、あなたはどなたで……」
 と、田上老人は自分のまえの名簿をひきよせた。
「本田ですが……」
「ああ、本田さん。……すると、何ですか、あなたはこの件について何かくわしいことをご存じのお方で?」
「くわしいというほどのことは存じていませんが、平尾さんのおっしゃった急先鋒のうち、一人だけよく存じていますので。」
「ほう。」
 と、田上老人は、眼をかがやかした。しかし、今度はその名前を発表せ
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