の沈默をやぶったということに好奇の眼をかがやかしたのである。
「君は――」
 と、次郎は気味のわるいほど底にこもった声で言った。
「君は、新賀が血判をするまえにあれほど念をおして言ったことを、きいていなかったのか。」
「きいていたよ。」
 馬田はそっぽをむいて投げるように答えた。硬ばった冷笑が、しかし、彼の落着かない気持を裏切っている。
「きいていて、それをはじめから無視していたのか。」
「まあそうだね。どうせ血染の文章なんか役に立たないってこと、僕にははじめっからわかっていたんだから。」
「すると、君の血判はうその血判だったんだね。」
「血判はうそじゃないよ。血染の文章に敬意を表したのはほんとうだからね。」
「君はただそれだけのために血判をしたのか。」
「そうだよ。」
「君がいま言ってることは本気だろうね。」
「むろん本気だよ。」
「それで君はみんなを侮辱しているとは思わんのか。」
「思わんね。僕はあべこべにみんなを尊敬しているつもりなんだ。」
「尊敬している? 約束をふみにじって何が尊敬だ。」
「僕は、みんなの目的を達するようにするのが、ほんとうの尊敬だと思っているよ。」
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