ながら、次郎の方によって来た。帽子はやはり右手にわしづかみにしたままである。
 次郎はだまって馬田の近づいて来るのを見ていた。馬田は、次郎から二三歩のところで立ちどまったが、その左肩はまだつき出したままだった。
「用がないからって知らん顔するのは失敬じゃないか。」
 次郎は返事をする代りに、穴のあくほど馬田の顔を見つめた。馬田は、その眼に出っくわすと、ちょっとたじろいたふうだったが、口だけは元気よく、
「失敬だとは思わんのか。」
 次郎は、それでも返事をしない。視線はやはり馬田の眼に一直線に注がれたままである。
 馬田も、それっきり口をきかなかった。二人は、かなり永いこと、にらみあったまま突っ立っていた。次郎が視線も手足も微動《びどう》もさせなかったのに反して、馬田の視線はたえず波うっており、その手足はいつももじもじと動いていた。
 馬田の視線がとうとう横にそれた。同時に、「ふふん」とあざけるような息が彼の鼻をもれた。
 次郎は、それでも一心に彼の顔を見つめていたが、急に、何と思ったか、くるりと向きをかえ、彼を置き去りにして、すたすたと歩き出した。
 松の木の間をもるひっそりした日ざし
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