をさせていたが、
「次郎君は、ねちゃったのか。――起こしちゃかわいそうかね。」
 次郎も、しかし、その時には眼をさましていたのである。彼は、
「僕、おきています。」
 と、恭一の肩につかまりながら、起きあがった。
 三人は、それから、大沢のもって来た新聞紙の袋に、かわるがわる手をつっこんでは駄菓子を食った。円いのや、四角いのや、棒みたいなのがあったが、色はむろんまるで見えなかった。たいていはぼろぼろのものだったが、その中に、固くて黒砂糖の味のするのがわずかばかりまじっていた。しかし、どれもこれもうまかった。三人とも、ものも言わないでむさぼり食った。袋がからになると、大沢が、
「水もあるよ。」
 と、次郎の手に水筒を握らせた。次郎はぐっぐっと息がきれるまで飲んで、それを大沢にかえした。すると大沢は今度は恭一の手にそれを渡した。
「うんと飲めよ、僕はもうたらふく飲んで来たんだから。」
 それでも、恭一の飲み終ったあとを、彼はからになるまで飲んだ。そしてそれがすむとすぐ、三人はかたまって藁の中にもぐりこんだ。
「僕一人で行ったのが、どうもいけなかったらしいんだ。」
 と、大沢は藁束の落ちつき
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